「花髑髏(作品集)」(横溝正史)

金田一と対極にある探偵像、吉川・由利

「花髑髏(作品集)」(横溝正史)
 角川文庫

「花髑髏(作品集)」角川文庫

死刑判決を受けたかつての
婚約者・慎介を救うため、
月代は資産をつぎ込み、
脱獄計画を練る。
首尾よく進んだものの、
脱獄した男は慎介ではなかった。
それは詐欺・恐喝強盗・
誘拐等の罪で服役していた
希代の犯罪人・
百蠟三郎だった…。
「百蠟変化」

TVで「探偵・由利麟太郎」が
始まりました。
全5話の第3話まで進んでいます。
私は基本的にTVを観ませんので、
番組の内容は分かりませんが、
ネットで写真を見る限り、
吉川晃司の由利麟太郎は素敵です。

「風采の上がらない男」という
金田一耕助の人物像(多くは
石坂浩二や古谷一行が
イメージを確かなものにした)に対し、
吉川晃司の由利麟太郎は
男前でダンディ、
身だしなみもすっきり整えられ、
紳士的です。
吉川晃司の主演によって、
由利麟太郎の探偵像は、
金田一のそれとは対極なものとして
確定しそうです。

映画俳優・桑野は、
幼なじみの葭枝から
相談したいことがあると
呼び出される。
葭枝は夫である芸術家の瀬川と
うまくいっていないらしい。
葭枝は桑野に
夫からの手紙を見せ、
夫を救出してほしいと頼む。
その手紙は謎に満ちていた…。
「焙烙の刑」

金田一と由利の
ビジュアル的な面の違いが
明確に現れるのはもちろん
映像作品となるのですが、
では原作本では、
由利作品は金田一シリーズと
どう違うのか?

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ひとつは登場人物が
極めて個性的であり、
それら怪人物が作品中を縦横無尽に
跋扈しているということでしょう。
「百蠟変化」では、「猫のような瞳で、
一度、じいっと凝視められたが最後、
どんな女でもそれに抵抗は
できないといわれている」女たらしの
犯罪者「百蠟三郎」を筆頭に、
その百蠟を見事に弄ぶ
さらなる悪人「謎の美少年」、
小ずるい悪党・鴨打博士が
事件を掻き乱していきます。

「焙烙の刑」でも、
女性首領率いる犯罪者集団と
悪魔のような「痣の男」が暗躍し、
その一方で映画俳優・桑野が
由利先生顔負けの活躍をします。

「花髑髏」では、
湯浅博士、日下医師の息子・瑛一、
白痴書生の魁太と、
怪しい面々ばかりです。
こうしたトリッキーな登場人物が
目立つのが由利・三津木シリーズ
読みどころとなっているのです。

探偵・由利のもとに舞い込んだ
差出人不明の手紙。
そこには殺人事件の予告と
由利への挑戦、
そして「花髑髏」の署名が
書かれてあった。
三津木とともに
手紙の指定している場所へ
駆けつけた由利の眼の前で、
血を流した娘が見つかる…。
「花髑髏」

さて、
「探偵・由利麟太郎」の原作本として
復刊された本書の表題作「花髑髏」では、
由利の活躍は今一つです。
なぜなら真犯人に
犯行手口を語らせるのは由利・三津木の
探偵コンビではありません。
「花髑髏」なる殺人鬼に追い詰められた
被害者による問いかけで、
結果的に犯人の口から事件の真相が
語られるというものだからです。
このあたりはTVではどのように
脚色されているのでしょうか。
ダンディ探偵が後手後手に回っていては
格好がつかないでしょう。

チェンジ部分が隠れてしまった!

何はともあれ、杉本一文装幀表紙で
復刊されたことは喜ばしいかぎりです。
そして旧版とは表紙のささやかな
デザイン変更が見られるのも
嬉しいことです。

あとは「探偵・由利麟太郎」がヒットし、
来年あたり第2シーズンがつくられ、
「幻の女」「仮面劇場」「双仮面」といった
名作たちが続いて復刊してくれることを
願うばかりです。

(2020.7.5)

〔関連記事:由利・三津木の事件簿〕

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〔角川文庫の由利・三津木シリーズ〕
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